#ブラックアウトの夜(静修百物語 23)

管理人さんの背を見送りながら、次の女子生徒が口を開いた。

「今のお話を聞いていて思い出したことがあります。「へとへとさん」というお話です。「べとべとさん」ではありません。私は表の部活の茶道部にも属しているのですが、活動場所は同じこの作法室です。冬の日没はとても早くて、茶道部の活動を始める時間には、外はもうとっぷりと暮れてしまいます。定期試験が近づいていたからでしょうか、多くの生徒はさっさと下校してしまいました。お茶を点てながら、その日、帰ってから試験勉強する予定の教科の教科書とノートを教室に忘れて来たことに気づきました。私は顧問の先生に許しを得て、5階の教室にそれをとりに戻りました。もうだれもいません。廊下の窓からは薄野方面のビルの明かりが美しく見えていました。

教室に入り、目的の教科書とノートを抱えて、急いで作法室に帰ろうとしました。5階の廊下を歩いていると、急に足が重いと感じたのです。一歩歩くたびにどんどん重くなってきます。どうしたんだろうと思っていると、うしろから、ひた、ひた、ひた、ひたと近づいて来る気配があります。その足音の感じから、これは人間ではない。この世のものではないと直感しましたが、もう重くて自分の足なのに持ち上がりません。どうしよう、どうしようという気持ちで完全に立ちすくんでしまったのです。怖くて振り返ることもできません。

その時、テレビで観た「のんのん婆とオレ」というアニメと実写をまぜたような番組を思い出しました。「べとべとさん」という妖怪の話でした。そういう場合は「べとべとさん先にお通り」と言うと追い越して先に行くので命が助かるというおまじないのようなお話でした。それで、私も気持ちを奮い立たせて「べとべとさん先にお通り」と言ってみました。もうほとんど私の背中のところに迫っていたその得体のしれないやつは、耳元で「おれはべとべとさんじゃないよ。へとへとさんだ。そのまじないは効かないよ」とささやくのです。そして「おれはもうへとへとなんだ、おぶってくれよう」と私の背中にのしかかってきたのです。(・・・続く)

#ブラックアウトの夜(静修百物語 22)

「会議室に抜け、図書館の前に来ると、中でよう白いもんがふわふわ飛んどりましてな、ときどき「アチョ、アチョ」という元気な声も聞こえまんな」。「あっ、それ私が聞いたケンシロウさまの声よ」と先ほどの、コックリさん遊びの女生徒。

「それが購買の前に来ると、霧がかかったように、雲がたなびくように、湿気が濃厚に立ち込めとりまんねん。あそこには何かが絶対にいてますな。そうそう、近くの体育館の出入り口のところに部活の生徒がよく使う水道がありまっしゃろ。そこから水がポツン、ポツンと滴る音がよく聞こえるもんで、蛇口をしめて歩くんですわ。ところがじきにまた聞こえてくるんですわ。

体育館の後ろのあたりからは、女の人がしくしく泣く声がするんで、覗いてみると壁のところに顔を覆って泣いてる女の人が白く浮かび上がって見えまんねん。昔、その壁に塗り込められた人がいてはるんですかいのう。そこから戻って、各階を順に歩いとりますとな、教室の中からも、よう話し声がきこえてきまっせ。最初の頃は、生徒がまだ残っとるんかいなと思いよりましたが、そこには誰もいてしまへんのや。廊下で時々、ひたひたゆう足音もしまんねん。

それは北校舎でもおんなじなんやが、北校舎では琴を弾く音もしよりまんな。きれいな上手な琴でっせ。音楽室の前を通るとたまにピアノの音もしまっせ。調理室からは包丁で何かを刻む音も漏れ聞こえま。事務室前に戻るとどこからかお経のような、唸るような声がして、線香のにおいまでしまんねん。

あんまり怖がらせてもいかんよってに、わての話はこのぐらいにさせてもらいますわ」。

管理人さんは燃えている蝋燭の芯を指でつまんで火を消した。

「きゅーわー(九話)」と岡部。「お仕事の途中なのに、ありがとうございました」と松平。

管理人さんは、よっこらしょ、と腰を上げ、「くれぐれも、蝋燭の火の管理には気をつけてくださいよ。火事でも出したら大ごとですさかい」と言い残すと、作法室を出て行った。

(・・・続く)

#ブラックアウトの夜(静修百物語 21)

と、その時である。ドン、ドンと作法室の引き戸を叩く音。一同、ぎょっとして入口の戸を振り返る。ガラガラと戸が開けられた。懐中電灯の光がメンバーに注がれる。窺うように首だけを出して、中を覗き見たのは校舎巡回中の管理人さんだった。

「あんたらこんな夜中に何してまんねん」(なぜかまた関西弁)と懐中電灯で照らす。一同沈黙。「あれ? 松平先生と岡部先生やおまへんか、何してまんねん」。一同、その懐中電灯の眩しさを避けるように、手で光を遮る。松平が丁寧に事情を話すと、「そういうこってすか。びっくりしよりましたがな、正式な許可をとっておいてもらわんと、わて、こまりまんねん」。「夜の巡回ご苦労さんです。巡回中に怖い体験もよくされるんでしょうね」と岡部が水をむける。「そりゃー気色悪いことは日常茶飯事でっせ。もうだいぶん慣れましたによって、いちいちびくついたりはせえへんようになりましたからに」。「よかったら、ちょっとでもお話を聞かせてもらえませんか?」。

「そうでっか、そんじゃ、お言葉に甘えて、一席講じさせてもらおやおまへんか」と言うと管理人さんは机の前に胡坐をかいて座り、お茶を一杯すすると蝋燭に火をつけた。

「夜中に巡回しとりますとな、いろんな音が聞こえてきよんねんな。わては「夜の物音」というテーマで話させてもらいまっせ。巡回の順路は決まっておりましてな、まずは職員室ですわ。だれもいないのに、いろんな話声が聞こえてきよりますねん。学校内で、ここが一番うるさい場所でっしゃろな。時間割のコマをひっくり返す大きな音が聞こえてびっくりしたこともおましたな。昔おったなつかしい先生の声も聞こえてきよりますが、いろんな声が混ざりおうて、内容まではよう聞き取れませんなあ。時々、オルゴールの音もきこえよるが、いつも月に一回、決まった日に鳴りよりますがな」。(・・・続く)

#ブラックアウトの夜(静修百物語 20)

「今、コンピューター室のパソコン画面に現れた顔の話が出ましたが、さっき私は別の現象を目撃したのです」と8人目の女生徒。「では、蝋燭をつけさせていただきます。わたしは「体育館の怪」というお話をさせていただきます。

「トイレから帰る時に、なんだか二階から物音が聞こえるような気がしたのです。暗くて怖かったのですが、そっと階段を上りました。職員室前の廊下の所で急に体が熱くなるように感じたのです。気が付くと顔や首筋から汗がしたたり、手の甲にも汗の粒が浮かび、それがすーと流れていくのです。どうしたんだろうと、ハンカチで汗をぬぐおうとしたときです。体育館に煌々と電気がついているのが入り口ドアの隙間から見えたのです。さきほど聞いた物音は、その体育館から響いているのでした。こんな時間に部活をやっているはずはないと不思議な感じがしました。そーっと近づき、こっそり扉の隙間からのぞきました。サロメチールのにおいが鼻をかすめました。

ステージ上ではレオタード姿の新体操部の生徒が、リボンやバトンやボールを使って跳ね飛んでいます。ステージ下ではバスケット部の生徒が5対5の練習をしています。シューズのキュッ、キュッという床にこすれる摩擦音がし、靴のゴム底のにおいも鼻腔に届いてきます。ドリブルするボールの弾む音や、リバウンドを争って身体をぶつけ合う音も聞こえます。フェイントで素早く反転する鋭い動きも見えます。

体育館中央に張られたネットを挟んでめいっぱい体を反らしてスマッシュするバドミントンラケットが空気を切り裂く音や、身体を床に着くほど低く前に伸ばしてその羽を拾う選手の姿が見え、パシッ、パシッとシャトルを打つ音が響いています。

体育館奥では、ネットの向こうに並んだ選手が次々にジャンプしてバレーボールを叩き落しすスパイク練習の鋭い腕の振りが見えます。低く構えた選手の懸命なレシーブ姿も見えます。サーブしたボールが床で弾んで転がって行きます。

ユニフォームのデザインはどことなくみんな古いのです。でも、どの選手も素敵な笑顔で、楽しくてたまらないという感じです。

しかし、こんな深夜に体育館での練習が許されるはずはありません。私は何をみているのでしょう。これは幻にちがいないと思いました。そーと離れて、今、作法室にもどってきたのです。」

蝋燭が、ふーっと消された。

「はちわー(八話)」と岡部が告げる。

「あなたが目撃したのは、亡者ではありません。それは生霊です。若き日の青春の部活の輝かしい日々に帰ってみたいのです。その無数の願いが体育館に憑り付いてそういうシーンを再生しているのです。恨みつらみという妄念だけが、怪異を生み出すのではありません。美しい青春の記憶もまた現実を超えた映像を生み出すのです。それは、とても尊いのです。この「百物語クラブ」の日々も、あなたたちにとって、いつかかけがえのない青春の記憶となるでしょう」と岡部。「うーん、きれいにまとめましたな、そのとーり」と松平。

(・・・続く)

#ブラックアウトの夜(静修百物語 19)

その7人目の女子生徒は蝋燭に火を灯すと語り始めた。

「では、今さっきのお話をしましょう。「パソコンの顔」という短いお話です。さっき、トイレから出てきたら、もうみんな作法室に帰ってしまったみたいでだれもいません。ちょっと怖いなあと思いながら非常灯の緑色の明かりを頼りに廊下を歩いて、コンピューター室の前に差し掛かった時です。暗い部屋の中にいっぱい並んでいるパソコンの中の一台にぱっと光がともったんですう。えっ、と思ってその画面を見たら男の人の顔が映っているではありませんか。その目は突然、ぎょろりとこちらをむいて、無表情に私を見ているんですう。その時、私はドアの前で金縛りになったのです。震えながら見ていたら、他のパソコンが一台、また一台と起動して、その画面に次々と男の人や女の人の顔が浮かび上がってきたのです。謹厳そうな顔の男の人の顔が多かったんですが、なかには微笑みながらこちらを見ている女性や、変顔で笑わせようとしている顔もありました。邪悪な感じは全くありませんでした。でも、やっぱり怖いので、作法室まで走って逃げてきたんですよう。」

その女生徒は、そこで蝋燭の灯をふっと吹き消した。

「ななわー(七話))」という岡部の声。「きっとあなたが見たのは、この学校に関係する物故者の方々だろうね」と岡部。「ぼくが見たら何人かは誰かわかったかもしれないねえ。学校に対する愛着が念としてパソコン画面に出て来たんだろうねえ。それはたぶん悪さをするような悪霊ではなく、この学校の守護霊のようなものかもしれないねえ」と松平。(・・・続く)

#ブラックアウトの夜(静修百物語 18)

「トイレネタが出たところで、ちょっとトイレタイムをとりましょうか。行きたい人は行ってきてください。暗いですから気を付けて行ってきてください。トイレットペーパーが切れている可能性もありますから、各自、用心のため紙は持参しましょう。雪隠ぜめはこわいですからねえ」と松平。

「15分後に再開するから、遅れるんじゃないよ」と岡部。

やがてトイレから帰って来た面々はしばし雑談。「岡部先生の亡くなられたお父さんが時々、先生の車に乗っておられるというのは本当ですか?目撃情報がいっぱいあるのですが」「うん、よく助手席に乗っているよ」「怖くないですか」「父親だからねえ」「なんで出てこられるんですか」「私のことが心配だからだろうね」「出来の悪い娘を持つとお父さんも安心してあちらに行けないということでしょうかねえ」「失礼な」「お父さんと交信したりされるのですか」「いや、そんなことはしないな。どうせ小言を聞かされるのにきまっているからね」「小言を言われるような心当たりはあるのですか」「そんなのないね。私は他人からも、親からも自分の生き方に対してとやかく言われるのは真っ平なんだよ。父親もたぶんそれでいいぞ、と思っているんだろうね。でも、最近はあまり出てこなくなったなあ。それはそれでちょっとさみしいけどね」

「さあ、そろそろみんな揃ったようだし、再開しましょうか」と松平。

「あのー、まだ一人帰ってきていないんですけど。」「だれだろう、大丈夫かな、様子を見てきましょう」と松平は立ち上がった。

と、そこに駆け込んで来た女子生徒。「ああ、怖かったのですう。」「何があったのかな?」と松平。「この体験を私のお話にさせてもらっていいですか」「どうぞ、どうぞ」と松平。

「では、再開しましょう」というと、岡部はボクシングのゴングのように家から持ち込んだ仏壇の鈴を叩いた。チーーーン。(・・・続く)

#ブラックアウトの夜(静修百物語 17)

「もし、もし、もし、もし・・・」。その時です、突然返事が返ってきたのです。「はい、○○です」「こちらから掛けておいて失礼なのですが、あなたはどなたでしょう?」「だから、○○だと申し上げたではございませんか」「○○さんだとは承知しました。僕は札幌の静修高校の生徒ですが、学校の電話からでたらめに電話したら〇〇さんにつながったのですが、事情を知りたくて、ジー、ジー、ジー」「あら、あなた静修の生徒さんでいらっしゃるの、正確にいえば静修女学校でしょう。ジー、ジー、ジー それにあなた、女の子の声なのに、なんで、僕っておっしゃるの」「それはちょっと癖のようなものでして」「変な方ね」「あのう、状況を整理したいのですが、〇〇さんは今どこにいらっしゃるのですか」「寄宿舎ですわ」「あのう、とても古風な話し方をされますが、今は何年でしょうか」「変なことをお聞きになるのね、昭和12年にきまってるでしょう」。うわっ、この電話は時空を超えている。

「ところで、さっき、うー、うーってうなり声のようなのが聞こえたのですが」「あら、聞いてらっしゃったの、失礼ね、恥ずかしいわ。実はね、私便秘気味なの」「えっ? 今どこにおられるのですか」「ご不浄よ」「なんで、便所に電話があるんですか」「それは、わたしも不思議に思ったんですけどね、以前、この汲み取り式のご不浄で便器の下の肥溜めに落ちて出られなくなった方がいて、救助されたことがあったんですって、以来、緊急の事故に備えて救助連絡用に設置されたのだと聞いたことがありますわ」「便秘は大丈夫なのですか」「ありがとう、もう大丈夫。さっき開通したわ。でもね、紙がないの」「えっ、紙?」「お尻が拭けないの、それでここから出れないの、もう何年になるかしらねえ。学校では、開かずのご不浄といって恐れられているらしいの。外からは施錠されて、お札なんか貼ってドアは封印されているらしいの。雪隠ぜめってやつだわ」「大変ですねえ」「そう大変なのよ」

と、その時である、事務室前からこちらをいぶかしそうに見ている先生がいる。しまった、ばれちまった。「こちらも緊急事態になりましたので、電話切りますね」「あら、さみしいわ」電話の向こうからは「おおー 紙よー!ジージー 我を救いたまえー、ジージー おおー 紙よー!」という祈りのような言葉が聞こえていましたが、慌てて受話器を置いたのです。

その後、もう一度電話をしようとしましたが、あのときのでたらめの番号はついに思い出せなかったのです。そして、やがてその黒電話は撤去されてしまったのです。もうあのトイレの神様みたいな人と話すことは永遠にできなくなったのでした。」

蝋燭が消えた。「ろーくーわー(六話)という岡部の声。「それ。怪談? それとも笑い話?」と岡部。「ちょっと臭い話でしたねぇ」と松平。(・・・続く)

#ブラックアウトの夜(静修百物語 16)

僕は、その黒電話に興味を抱き、時々、その電話に触って見たりしていましたが、そのダイヤルを回してみたいという誘惑と戦うようになったのでした。ついに、ある日、その誘惑に負けてそっと一人でだれもいない第一視聴覚室に入り、電話の前に立ちました。壁には校内の内線番号の一覧が貼ってありました。その番号を避けて、それ以外の適当な数字を組み合わせて、番号をダイヤルしてみたのです。ジーコ、ジーコ、ジーコ・・・、誰かに見つからないように、その場にしゃがんで受話器を握り締めて応答を待ちました。

ジリーン、ジリーンと呼び出し音が鳴っているのが聞こえます。だれも出てきません。それでも僕は応答を待ちました。何十回鳴ったでしょうか、受話器を取る音が聞こえました。聞こえて来たのです。電波状態が悪いからでしょうか、ジーという雑音のむこうから声が聞こえてきます。うーん、うーん、うーんという苦しそうな声がジー、ジーという雑音の向こうからかすかに聞こえてきます。僕はぞーっと全身に鳥肌が立ち、冷たい汗が背中を流れるのを感じます。寒気がして体が震えだしました。それでも受話器を握り締めたまま聴覚感度を最大限にすべく集中しました。うーん、うーん、うーん、ジー、ジー、ジー、うーん。とても苦しそうです。でも、やがて、ぷはー、という中年のおじさんがジョッキのビールを飲みほした時のような声がしたのです。

僕は恐る恐る声をあげました、もし、もし、もし、もし・・・。(・・・続く)

 

#ブラックアウトの夜(静修百物語 15)

「伝承遊びネタが続きましたので、新しい切り口のお話を期待します」と岡部が誘導する。

自分のことを「僕」という一人称で話す6人目の少女が蝋燭に灯を灯して語り出した。

「僕は「黒電話の怪」というお話をします。演劇部が練習によく使っていた第一視聴覚室がありますね。以前は職員室だったと聞いたことがあります。その部屋の後ろの掃除箱の上にダイヤル式の古い黒電話が置いてあります。内線専用で外線にはつながっていません。ところが、一人の友人がいたずらででたらめな番号を回したら、どこか外部につながって、きびきびした男の声が帰って来たというのです。「あなたの位置と、名前と用件を正確にお話しください。緊急性が高いことでしたら、まずその緊急案件を・・・もしもし、どうしました。答えてください。急を要する事故ですか?・・・もしもし、もしもし・・・」友人は恐くなって何も言わず、受話器をすぐに置いて切ったということです。

その日の帰りのホームルームでのことです。「今日、外部にいたずら電話を掛けた生徒がいる。該当する生徒は正直に申し出なさい」と厳しい語調でした。全クラスで同じように聞かれたのだと思います。

その友人は後でこっそり担任のところに行き、「たぶん私が掛けた電話だと思います」と正直に名乗り出たそうです。少し厳しく注意を受けただけで放免されたということでした。なぜ外線につながったのか不思議です。後で聞いたところによると、友人がでたらめで回した番号は海難事故がおこった際に船舶が使う海上保安庁の緊急連絡番号だったそうです。海上保安庁はその電話元を逆探知し、すぐにいたずら電話と判断し、学校に厳しい抗議と、厳重な指導を要請する連絡があったのだということでした。

ここまでは、私のお話の前振りです。(・・・続く)

 

#ブラックアウトの夜(静修百物語 14)

机の上に、10円玉を置き、鳥居の絵や数字や50音を書いた紙を置きます。みんなで10円玉の上に手を置き、いろんな質問をします。十円玉が動いてとまった文字や数字をつなげていくと、コックリさんからの託宣がわかるという遊びです。私たちは笑いながらも真剣に、夢中になりました。1人の友達が「私の未来を教えてください」とお願いし、コックリさんをはじめました。返って来たその答えは「お・ま・え・は・す・で・に・し・ん・で・い・る」という非情なものでした。友達は「げーーー」と叫び、顔面蒼白になって震えていたのです。その時同時に、私の頭の中で「アチョ、アチョ、アチョ、アチョアチョアチョ」という意味不明な叫び声が響いたのでした。それでも、私たちはめげずにコックリさん遊びを続行しました。

ところが、やがて突然、一人の友達が変になったのです。何かに憑依されたのでしょうか。意味不明の言葉をつぶやき出し、床に倒れて口から泡を噴き出ししまったのです。慌てて先生に連絡し、救急車で病院に運ばれていきました。「アチョ、アチョ、アチョ・・・」はこっくりさんからの「もうやめろ」という警告だったのかもしれません。幸い、翌日には元気に登校してきましたが、もうこんな危ない遊びはこりごりだと思いました。でも、みんなで輪になって囲むという構図の共通性を「かごめ。かごめ」遊びや「コックリさん」占いに感じます。これも土俗的な吉凶占いに起源をもつのでしょうか。」

そこまで話すと、その女学生は「ふーっ」と蝋燭に息を吹きかけ灯を消したのである。

(ろくわー(六話))と岡部。岡部は真剣な表情で、「興味本位で、そんな危険な心霊遊びをしては絶対にいけません。どうしてもやりたかったら、きちんとした霊能力者に指導者としてサポートしてもらわねばいけません。素人が面白半分にやったら取り返しのつかない精神破壊を招きかねないのです」と数珠を揉みながら諫めた。「そういう危険性があるから、この部活は公式に認められないのです。みなさんの慎重な行動を望みます」と松平。

(・・・続く)