静修の友

#静修版荒野の用心棒(女傑編 3)

そこに救急箱を抱えて小走りに現れた養護教諭の岩城未季。「あなたたちは病気です。受診して病気の更生プログラムを受けたほうがいいですよ」とやさしく諭す。体育館の図書館側の入り口では、淡谷良子、芳賀敏子、小松信子、小田切美子、高橋秀子、吉田照美、明正光子、伊藤由美子、土屋陽子、橋井啓子、堀田理恵子、射場伴子が集まって「ああ怖い、静修の花園を荒らすふてえ変態野郎どもは完膚なきまで成敗すべきではないでしょうか」などとささやきあっている。坂東節子は「殲滅すべし」と叫ぶ。

その場を通りかかった瀬尾幸子と渡部由理子は英語で男たちをなじる。瀬尾は意味不明の前置詞攻撃である。「to,for,about,on,at,by,from,in,across,among,over・・・」。男たちは混乱し、頭を抱える。渡部は色っぽい声の英語で何やら男たちを諭し始める。その横から、「give it up!」(あきらめな!)と千葉美和子が柔らかい声で宣告する。その隙に藤野と小倉が体育道具室にあった縄跳び縄で後ろ手に縛りあげる。

変態男たちは完全に観念した。斎藤(佐藤)雅子は3人の前に仁王立ちとなり、「おしおきよ!」と低い声で言うと、3人の頭頂部に右拳のとんがったところをぐりぐりと捻じ込んだのであった。男どもはやがて警察に連行されていった。

ステージの演題の上で胡坐をかいて見守っていた橋爪恭は、牢名主の風格で煙草をふかしながら「静修の純潔は暴漢から守られた。あっぱれ、あっぱれ」とのたもうたのであった。体育館に駆け上がって来たチャッピーも微笑みながら前足を高々と上げ、万歳をして見せた。そのチャッピーの頭を今井が軽くたたいてねぎらう。「チャッピー、ご苦労だったね、後で温泉に連れて行ってあげるからね。ところで、あんた、雄? それとも雌?」

(おしまい)

ここに登場してもらえなかった諸先生を含めて、静修の歴代女教師「ハンパねー」。

(これもでっち上げのお話です。登場する先生方のイメージを崩していたらごめんなさい。今井先生の大胆不敵な伝説的温泉エピソードを入れたかったが、うまくかますことができなかった。)

#静修版荒野の用心棒(女傑編 2)

と見るや、体育館ステージ側からセーラームーンのように(これもイメージ的にちょっと無理があるか)リボンを振り回して舞い踊りながら小倉正恵が現れたと見るや、小倉は忍者のように連続的にバク転を打ちながら男たちの前に立ちはだかった。一瞬ぎょっとした男たちは思わず立ちすくんでしまった。騒ぎを聞きつけ、北校舎側の入り口から藤野真弓が、図書館側の入り口から岡部泰子が、職員室側入り口から澤井美穂が腕組みして悠然と近づいてきた。男たちはさぞ怖かったであろう。

男たち3人が3人とも正座して、観念した。「あんたら不法侵入だよ。加えてわいせつ、窃盗罪だ」と澤井。「あんたら、やばくね?」と岡部。「そのバッグの中の物、出して見せな」とすごむ藤野。「ごめんなさい、ごめんなさい、言うとおりにしますから命だけは」と頭を床にすりつける男たち。「馬鹿言ってんじゃねえよ。ごめんですむなら、警察はいらねえ」と藤野は畳みかける。「早くだしてみな」。出るわ出るわ。濡れたスクール水着に、セーラーの上着、スカーフ、スカート、下着、白ソックスに、上靴まで。「これが動かぬ証拠、ブタバコに行きな」と澤井。

「動かぬ証拠」を撮ろうとニコンの高級一眼レフカメラでバチバチとシャッターを切る伊藤光枝。少林寺拳法の構えで今井啓子が威嚇し、藤原里美はテニスラケットをぶん回す。ボディービルダーでもあった斉田裕子(記憶が曖昧なので記憶違いかもしれない)が二の腕の筋肉を盛り上げ色々な筋肉美のポーズを次々誇示、威嚇する。

場を盛り上げるように校歌を勇ましくアレンジした曲をエレクトーンで新井田、ピアノで西田が弾く。(その二人の演奏にそれぞれ熱い視線を送る長谷川と平田であった)。その曲に合わせるように、威嚇なのか、あきれたもんだという憤怒の表現なのか、頭にかぶったズンドウ鍋を包丁で叩きまくる3人の家庭科大御所。タガネをトンカチで叩きまくる星野。(・・・続く)

#静修版荒野の用心棒(女傑編 1)

夏休みも間近な午後の授業中に、北校舎の被服室前で悲鳴が上がった。「キャー、変な人がいますよー。誰か―」という服部のぶ子(今回も敬称略)の声。プールの更衣室から出てきた3人の不審者と廊下で出くわしたのである。服部は被服室に取って返し、年季の入った裁縫の裁ちばさみを手に取った。それに続いて被服準備室から、浴衣を縫う授業中の漆崎千鳥が竹製の長い物差しを握って飛び出し、調理室からは、掃除用の長い柄のブラシを手に安友美穂が加勢した。男たちは「僕らは変な人ではありません。見逃してください」と懇願しつつ逃げだす。「どこが変じゃないのよ。怪しさの塊でしょう」と安友。

3人の男は揃いも揃って運動神経の悪そうな、ずんぐりした小太り体形な上にみんな厚いレンズの眼鏡をかけ、大きなバッグを肩から袈裟懸けにしている。服部、漆崎、安友の追跡を受け、変態三人組はこけつまろびつ階段を駆け上がり、本校舎との渡り廊下を抜け、体育館裏の狭い廊下を走り、階段を駆け下り、音楽室の前から生徒玄関に向かって走る。追いかけながら、漆崎は「おのおのがた、曲者でござるぞ、であえ! であえ!」と叫び、服部、安友は「変態だ―、不審者だー、侵入者だー」と声をそろえておらびあげる。

その声に反応して、本校舎調理室と、理科室の引き戸が同時に開いた。理科室からは鉱物を砕いて実験していたのであろうか、タガネとトンカチを手にした星野フサがにゅーと顔を出した。調理室からは東野政子、斎藤暢子、川中春江が何事かと3人そろって縦並びに顔を出し、即座に事態を理解した。

その騒ぎをチャッピーは横目でギラリと見るや、台座から飛び降り、素早くスライディングし、男たちに足払いを掛けた。男たちは蛙のように床に這いつくばって倒れたが、身を起こすや、今度は購買前の階段を駆け上がり、体育館に逃げ込んだのであった。その後を服部、漆崎、安友、タガネ・トンカチの星野が追い、さらにその後を家庭科の大御所3人が追う。その割烹着姿の大御所の出で立ちは右手に調理庖丁、左手にまな板の盾、頭にズンドウ鍋をかぶって(ちょっとシチュエーションに無理があるなあ、ヘルメット代わりのズンドウ鍋では重すぎるうえに前が見えんだろうが)、まあ、とりあえずそういう格好で走り込んで来たのであった。(・・・続く)

 

#七人の侍・荒野の七人・そして静修版荒野の用心棒(6)

こうして、危機は回避されたのであった。問谷を乗せたチャッピーが体育館の真ん中を進むと集団は大きく道をあけ、その真ん中をカツ、カツ、カツと通りすぎる。城生の吹く「荒野の用心棒」のテーマ曲の口笛が流れる。そしてそのままチャピー・問谷は生徒玄関に降り、今度は女子高生目当てに校舎の周りに蝟集している暴走族の改造車を蹴散らしに向かったのであった。荒野の保安官である。長谷川や谷浦や小宮、古屋が助っ人に続いた。

この抗争事件は後々まで後輩に語り継ぎ、静修の歴史に残しておかなければと、その一部始終を眺めていた妹尾は、文書記録だけではなく、歴史絵巻的な絵画として残さねばという絵心が騒ぎ出したのであった。体育館わきにあった体育授業や部活の練習メニューの表示に使われるホワイトボードの前にマーカーを手にして立ち向かったのである。チャッピーに乗る問谷の雄姿のクライマックス場面をスケッチしようとしたのだが、鹿が上手く描けない。耳のついた出来損ないドラえもんが角を生やし、四つん這いに手足を伸ばした得体のしれない珍妙な動物が出来上がり、それにまたがッている問谷は手足のついただるまさんの姿にしか見えなかった。「こらー、妹尾! 幼稚園のお絵かき遊びみたいな落書きやっている状況じゃないだろうがー、真面目に仕事しろー」とどこかから怒声が響く。かくして、絵巻は未完のまま消されたのであった。

騒ぎが収まった頃になって、おっとり刀で弓を手にした林が現れ、同時に池田(どんちゃん)が黒板消しを両手に「おれは静修の黒板叩き」と歌い、「これで一件落着じゃ」と黒板叩きで拍手する。ラーメンどんぶりを手に現れた鈴木はくわえタバコで麺をすすり(そんなことは可能かなあ?)満足気である。「さあ、そろそろ授業に行かさるかな」と園部がつぶやく。

5時間目を告げるチャイムが鳴り、それにうながされるようにして、それぞれがぞろぞろと教室に引き上げていったのである。体育館に残った花田は「つまらぬものを斬らなくてすんだ」とニヒルにつぶやき、大沢は「これでやっと食い残した昼飯が食える」とつぶやいたのであった。再び静修に平和が戻ったのであった。チャッピー疲れたね、ごくろうさん。

みんないなくなった体育館に、幣を両手でかざし、伊勢神宮の神官の血を引く宮路がしずしずと現れ。「かけまくもかしこき~、まがごと罪穢れあらむおば祓えたまひ清めたまへともおすことをきこしめせとかしこみかしこみも~す」と幣を振りながら祓い清めたのであった。

その祝詞の奏上が終わるや、体育館に「ブーーー」というブザーが響き、宮路は高らかに「めーそー(瞑想)」と言上したのであった。(おしまい)

(下らんものを書いているなあと思うが、今となってはちょっと懐かしい思いも湧く。いったい時代背景はいつなのよと思うが、勤務していた期間の複合映像の記憶の断片をこきまぜてでっち上げた。もちろん、こんな出来事があったわけではありません。意味不明のシチュエーションもあると思うが、読む人が読めば、ああ、あのエピソードを下敷きにしたなと、思い当たる所もあるかもしれない。できるだけ多くの先生を登場させようとして無意味に長くなったのでした。途中、妹尾も出せということなので、急遽、無理やり登場させました。)

同期会で披露した妹尾先生の「ドラえもん」

#七人の侍・荒野の七人・そして静修版荒野の用心棒(5)

その大橋の声に反発するように「いてまえー!」という叫びが上がり、三軍団がじわりと包囲網を狭めた。緊張は最高度に達した。長谷川はステージから宙に踏み切り、「エルボー・ドロップ!」と叫び、肘打ちの構えでスケ番スタイルのグループを牽制する。谷浦はロッキーのように小刻みに華麗なステップを踏みはじめ、助走をつけて跳び蹴りの態勢に入り、ミニスカ軍団を威嚇する。平田はヤマンバギャル軍団に対峙して「おめえら、その格好めちゃダサクね?」と牽制する、というより、挑発して火に油を注ぐ。「キー、ムカツクー!」というヒステリックな叫び。否が応でも緊張は高まり、一触即発である。

その時である。どこからか、カツ、カツ、カツという音が響き聴こえて次第にその音が高くなってきた。なんの音だと、一瞬全体が聞き耳を立てた。すっと体育館ステージに現れたその雄姿はだれだ?だれだ?だれだ? それは誰あろう、玄関の鹿のチャッピーにまたがった問谷であった。夜な夜な、この鹿にまたがって校内を巡視して歩いている(徘徊だという異説もある)という伝説は本当だったのだ。問谷を乗せて重そうにぜえぜえ言っているチャッピーはそれでも力を振り絞り、前足を高々と振り上げ、「ヒヒーン」ならぬ「ピキー、ピキー」みたいないななきの声を上げた。そして、問谷は体育祭で使うスタート合図のピストルを腰のフォルダーから引き抜き、天井にむけて撃ち放った。興奮するチャッピーを手綱で制御しつつ「静まれ、静まれ、静修の秩序を乱すものは俺が許さぬ!おのおの方、ここは矛をおさめなされ。それでもやるというのならわしが成敗いたすが、どうじゃ」。体育館後ろの壁を背に赤いジャージの鍋谷とオルゴールを手にした真島がにこやかな笑顔を浮かべて立っていた。にらみ合う両陣営の間をチャピーにまたがった問谷が睨み降ろしながら常歩(なみあし)で闊歩する。砂ぼこりまじりの風が吹き抜け、枯草の塊みたいなのがその風に転がされていった。(・・・続く)