#卒業式の歌

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静修の卒業式で歌われるのは校歌、静修賛歌、仰げば尊し、蛍の光ではなかったかと記憶する。今も変わらない伝統的な式次第なのであろうと想像する。

ところで、「唱歌」と「童謡」という言葉があるが、その違いをご存じだろうか。最近まで、そんなことを意識したことはなかったが、ふと思いついて井手口彰典という人の『童謡の百年』(筑摩選書)を読んでいて、その違いを知った。

明治政府は1872(明治5)年に我が国で最初の近代的な学校制度である「学制」を発布し、その中で小学校に割り振られた授業科目の一つが「唱歌」であったという。そこで用意された歌曲の総称としても「唱歌」の語は使われたという。その際、曲の多くが外国の旋律を借用したものだったそうである。唱歌の特徴の一つは「国家形成のための手段であった」と指摘している。江戸時代までは多くの人々の意識にとって「国」とは相模国や武蔵国というような個別な藩であったが、「日本」を一つの単位として諸外国と渡り合う必要上、「日本人としての共通アイデンティティを植え付けるための重要な手段の一つとして唱歌を活用しようとした」ということである。「仰げば尊し」も「蛍の光」も唱歌である。そういう視点で歌詞を読み返すとなるほどと思う。

その唱歌に対する批判として大正期児童文学をリードした『赤い鳥』という誌を主宰した鈴木三重吉は「唱歌は芸術的に「低級」で「愚なるもの」だから、それに代わる「真価ある純麗な」童謡を子供たちに提供しよう」として大正期を中心に生み出されたのが「童謡」であるという。北原白秋の「故郷」三木露風の「赤蜻蛉」などがそれである。それに対しても、その後、今度は「童心主義」という批判がおこるのであるが。

さて、「仰げば尊し」であるが、この歌はスコットランド民謡の旋律を借用して、それに日本語歌詞をつけて明治のころから多くの学校の卒業式で歌い続けられた定番曲である。文語体の歌詞だから、今の生徒には「おもえばいととし」とか「いまこそわかれめ」も耳で聞いただけでは意味不明であろう。「身を立て 名をあげ やよはげめよ」にも明治社会の価値観がうかがえる。伝統的な卒業式の情感を醸す歌として卒業式参列者のノスタルジックな情趣を演出するという意味ではありかなとは思う。ただ、ぼくはこの歌には抵抗感があった。「仰げば尊し我が師の恩」という歌詞の歌を、教師主導で、生徒に歌わせるというのがなんだか嫌だった。我が尊き教師の恩を仰ぎ見よと言っているようで、おこがましい歌詞だなあと思っていたのである。

「蛍の光」というとぼくは今ではパチンコ屋やスーパーで、もう店じまいですから早く帰る用意をして下さいと促され、煽られる曲としてのイメージも強いが、これももとはスコットランド民謡であるという。その原曲歌詞の訳文を読むと、人生の時の流れの哀感をこめて乾杯するような抒情的で魅力的な歌詞であり、英語圏ではカウントダウン後の新年ソングになっているそうである。

この歌も日本語歌詞は文語体であるので、意味がとりづらい。「いつしかとしもすぎのとを」、「かたみにおもうちよろずの」「さきくとばかりうとうなり」など、耳で聞いても意味不明であろう。卒業式では、内容的に無難なその1,2番が歌われるが、3、4番はかなり前時代的な日本語歌詞が付されている。3番「ひとつに尽くせ国のため」(ひたすら力を尽くせ 国のため)、4番「千島のおくも沖縄も 八州(日本のこと)の守りなり(守りの要である) 至らんくにに(統治の及ばない国には) いさおしく(勇敢に) つとめよ(向かえ) わがせ つつがなく(尽力せよ 我が兄弟 無事であれ)」と歌われた歴史を持っている。

まあ、生徒も教師もそういう歌の歌詞が担った歴史というようなことを意識して歌っているわけではなかろうから、目くじら立てることもあるまいが、そろそろ今の時代の生徒の感性に直接響く歌に変えるというようなことをこの先検討してもいいのかもしれないと無責任な立場から思うのである。全国の学校で今歌われているという新しい卒業ソングの中にも、今の静修の卒業式の空気感に合うものはありそうに思えるのである。その歌が毎年変わってもいいではないかとも思う。卒業式の主役は卒業していく生徒であるのだから。

#卒業式の歌」への12件のフィードバック

  1. 私も「仰げば尊し・蛍の光」を卒業式に歌わせることにかなり抵抗感がありました。それを職員会議の席でも意見を言ってきたことなど、懐かしい思い出が蘇ってきました😃

  2. 卒業式は独特な雰囲気ですねぇ
    歌の歌詞の内容はさて置き「蛍の光」や「仰げば尊し」はメロディーを聞いただけでジーンときます。
    今は「旅立ちの歌」とか「手紙」とか内容が分かり易い歌が合唱されているようですね。

    • メロディを聞いただけでジーンとくる、とは言いながら最近は男子も多くなったのであまり泣く生徒が少なくなったのでは?

  3. 来月は卒業シーズンですか。卒業ソングも時代の流れで変わっていくのでしょうか。
    静修は今だに『仰げば尊し、蛍の光』ですか?逆に古さ加減で注目を浴びるまで貫くとか(^w^)

  4. 『猫のお話し』~最終回~

    飼ってた猫が死んで数ヶ月後、家の玄関に猫がいる。花かつおをあげた。そしたら父親に怒られた。
    「あげたらまた来るからだめだ。」

    もう猫を飼う気はないそうだ。死んだ時がかわいそうになるし寂しくなる。とか言っていた。

    それから数ヶ月後、実家に帰ったら庭に木でできた箱がある。
    それからまた数ヶ月後、居間の窓に猫一匹出入りできるように小さな窓ができていた。
    それからまた数ヶ月、台所に猫用のえさがある。
    それからまた数ヶ月、「みーちゃんみーちゃん」と名前つけてほぼ飼っている状態になっていた。
    終わり。

  5. 妹尾先生からコメントいただきました。

    「同窓会」と「同期会」の違いについてのコメントありがとうございました。納得しました。

    そこで、あらためてネットで調べてみました。「違いがわかる事典」というのにあった説明から引きます。

    「同級生」=同じ学校の生徒、クラスメートのことをいう。

    「同期生」=同じ年度に入学または卒業したもの、入社年度が同じものをいう。

    「同窓生」=同じ学校、または同じ師について学んだものをいう。同じ学校の出身者であれば同窓生である。

    同じ学校の卒業生が集まる会の場合、クラスが同じであれば「クラス会」「同級会」「同窓会」、クラスが違い学年が同じであれば「同期会」「同窓会」、学年も違う場合は「同窓会」という、とありました。 

    ということは「同窓会」は三つの使われ方をしているので、それがぼくの混乱の理由だったのだと納得しました。昨年来たぼくの中学時代の案内葉書には「同窓会のご案内」とありました。内容からいって厳密には「同期会のご案内」が正しいのだと思ったのでした。でも、このあたりは曖昧に使われていても支障はそんなにありません。先日実家に帰省した折、92歳になる母親に「同窓会のご案内」の葉書が来ていました。これも厳密には「同期会」のようでした。今は、集まるのは数人らしいですが、その齢で集まるというのがすごいなあと驚きながら、どんな会話がなされるのだろうか、話はかみ合うのだろうか、と怖いような、可笑しいような、そのとんちんかんそうな集まりの場を想像したのでありました。

    なお、「同窓会」と呼ぶその語の由来としては「蛍の光」の「蛍の光、窓の雪」という歌詞の、「窓」だという説が有力だそうです。その「蛍の光」の歌詞は中国の史書『晋書(車胤伝)』にもとづいて作られたものだそうです。「蛍雪の功」という故事成語にもなっています。ということは、一緒に苦学した仲間の会、という意味にもなります。みんな苦学したのかなあ?、というのは冗談です。

    ところで、今年の「同期会」は平成4年度卒の同窓生だそうですが、その年度の方たちは昭和何年生まれということになるのでしょうか、教えてください。

  6. 今年の同期会の方たちは丑年ですね!早生まれの方は寅年ですね!西一さんは干支なんですか?(^.^)西一かなりはまってる(笑)
    ホームページに張り付けたいくらい。
    卒業シーズン・・・。自分の実家は猫の卒業ソングは歌えそうもありません(笑)読んでくれた方ありがとうございましたo(^o^)o

  7. 実は、同窓会・同期会の総合司会を担当する為…。
    同窓会、同期会、同級会・クラス会等。
    この違いを調べた事がありました…。
    その時に、同窓会の意味が案外と曖昧なのだと知りました。
    でも、同じ窓と表現する事に、爽やかな風が吹いたように感じました。

    そこで、2年前の同窓会の終盤…皆で校歌を歌う際に…手を繋ぎ、輪になりましょうと…【輪になって踊ろう】という曲を掛けながら…「眺めていた年代こそ違え、同じ校舎から眺めたその窓の空は、今も、繋がっていると思います。さぁ、皆さん!手を繋ぎ唄いましょう!校歌斉唱!」というような内容を司会しました。

    盛り上がり過ぎて、誰の耳にも入っていませんでした(笑)

    今年は、またホテルロイトンなので、校歌斉唱は、CD💿ではなく‼️
    先輩のピアノ生演奏での校歌斉唱‼️が、やっぱり、良いですね〜〜✨

    • 司会としてアナウンスしていた内容は私にも聞こえていませんでした(笑)手を繋ぎ輪になっての校歌斉唱は盛り上がりますね。今年は生演奏で是非!

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